診療・研究グループ、研究室紹介

アレルギー・グループ
稲田由紀子

  アレルギーグループは現在15名在籍しています。大学には浜崎雄平教授、山本修一、在津正文、人見会美子が診療にあたり、室英理子は教育担当助教として3月まで活躍して、現在は臨床協力医として、外来診療を行っています。さらに、大学の救急部では講師として人見知洋、助教に辻功介が在籍し佐賀県の小児救急の中核として積極的に活動しています。大学外では、佐賀県立病院好生館部長として市丸智浩、整肢学園では小林育子、梁井啓輔が勤務しています。大学の研究室では、大学院生として西奈津子、谷口一登(分子生命科学講座)、研究生として稲田由紀子が在籍し、宮崎倫子は育児休暇中です。また今年は稲田成安が7月に小城市三日月町にいなだ小児科・アレルギー科を開業し、積極的にアレルギー診療を行っています。さらに秋に小林育子が学位を取得、西奈津子は8月に論文が受理され、12月に学位審査が行われました。

診療について
 アレルギー専門外来は火曜と水曜で、主に気管支喘息・アトピー性皮膚炎・食物アレルギーの診療を行っています。喘息治療に関しては2008年小児気管支喘息ガイドラインが改定されました。吸入ステロイドを用いた診療が確立され、その結果入院も減ってきています。しかし一方で、依然コントロール不良の重症喘息は存在し、さらに乳児の喘息は増えつつあります。まだまだ課題は残されているようです。食物アレルギーに関しては入院で食物負荷試験を行っています。多抗原感作で制限されている症例の制限解除の時期の判定に役立てていきたいと考えています。

研究について
 主に大学で行っています。皮膚ケラチノサイトを用いてアトピーの痒みについての研究を行い、厚生労働省のアトピー性皮膚炎に関する班会議に加わって報告をしています。また引き続き、気道上皮細胞を用いて感染や喘息による気道炎症を、細胞から産生される様々なメディエーターから検討しています。

血液・腫瘍グループ
西眞範

  血液腫瘍グループは、石井榮一先生の愛媛大学教授就任から2年が過ぎ、できることから少しずつではありますが、グループを盛り上げていこうと、今年も成鳥目指して頑張っております。
臨床面では例年通り、10名前後の新規小児がん患児を受け入れ、血液腫瘍・固形腫瘍ともに治療に当たっており、症例に応じて造血幹細胞移植を含めた集学的治療を行っております。更に昨年からは脳神経外科との協力体制をこれまで以上に推し進め、小児脳腫瘍の化学療法についても小児血液腫瘍グループが一手に行うこととしました。これに当たって、当科も小児脳腫瘍コンソーシアム(JPBTC)に施設登録し、2名の髄芽腫治療に当たるとともに、外来でも3名の小児脳腫瘍(未分化上衣腫・髄芽腫・神経膠腫)のフォローを行っております。
現在、病棟は西眞範1名で、外来は西眞範、尾形善康の2名と、今吉美代子(高島病院)、磯村直子(有田共立病院)の4名で行っております。また、臨床面では小出佳代子先生やスーパーローテートの先生・3年目の先生に多くのサポートを頂いております。研究は主として貞包雄次郎が中心に行っています。
入院治療に関しては、臨床心理士の原田由利香さんの協力を得て、隔週で長期入院患児のストレス緩和療法としてのプレイセラピーを行っております。昨年から病棟に病棟保育士の方が配属となり、今後は、こういった方々や、小児がん経験者ならびにその家族によるサポート活動を拡充していく予定です。
1.診療
1)小児がん
 小児がん領域では、全国統一プロトコールが作成され、当教室でも急性リンパ性白血病はJACLS、急性骨髄性白血病や悪性リンパ腫・乳児白血病などはJPLSGという治療研究グループに所属して化学療法を行っております。他にも、進行神経芽腫・横紋筋肉腫・肝芽腫・脳腫瘍・血球貪食症候群・ランゲルハンス細胞組織球症などの疾患で全国規模の臨床試験が遂行中であり、当院でもそれに基づいて治療にあたっております。
現在、日本における小児がん患児のほとんどが、臨床試験登録施設において治療を受けており、JPLSG;日本小児白血病・悪性リンパ腫研究グループがその中核を担っています。私達も、このグループに参加することで、プロトコールの検討だけでなく、多くの先生方と、日々の症例の検討や相談を行いながら、またアドバイスをいただきながら日々の診療を行っています。
 昨年は、common ALLだけでなく、先天性骨髄性白血病・思春期Down症候群に発症した急性骨髄性白血病・再発T細胞性白血病などの症例の治療に当たり、良好な経過を得ています。
2)造血幹細胞移植
小児がんは近年、飛躍的に治療成績が向上しました。それは、画期的な新規薬剤によるものではなく、プロトコールの改良や支持療法の強化、そしてこの造血幹細胞移植によるところが大きいと考えられます。当科では、小児科病棟に併設した無菌室が1室あり、そこで白血病や再生不良性貧血・進行期固形腫瘍に対する造血幹細胞移植を行っております。年間2~3例の造血幹細胞移植を行っており、自家末梢血幹細胞移植、血縁間骨髄移植、血縁間末梢血幹細胞移植を行っているほか、臍帯血バンクの認定施設です。今後は、血液内科と共同で骨髄バンク認定施設の申請も検討中です。
 昨年は、肺転移を認めた肝芽腫のPBSCTを行うとともに、髄芽腫の2例でPBSCHを施行しました。しかし、髄芽腫の2例は1例がHPSを合併し、もう1例も治療抵抗性のため、PBSCTには至っておりません。なお、現時点では、骨髄バンクからの移植については九州がんセンターにお願いしております。
 当グループでは、佐賀市内だけでなく、大川・柳川・鳥栖・唐津・伊万里・佐世保・嬉野など遠方からも多くの紹介を頂き、佐賀はもとより福岡・長崎の患児もご家族の選択に応じて積極的に治療に当たっております。院内のMSWも増員となり、医療福祉サービスの紹介や手続きもこれまでよりスムーズに行えております。骨髄バンクからの移植以外は当科で過不足なく行っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
3)一般血液疾患
 近隣の先生方から、多くのご紹介を頂き、小児がんだけでなく多くの一般血液疾患の患児の診療も積極的に行っております。年間10~15名程度のITPや、自己免疫性好中球減少症、伝染性単核症などが主な疾患でありますが、貧血の精査や再生不良性貧血、VAHS、免疫疾患の診療も行っております。昨年は、好中球減少症からX連鎖性無γグロブリン血症の診断に至った症例や多彩な症状を呈したEBV感染症の症例、遺伝性球状赤血球症など多くの症例をご紹介いただきました。ありがとうございました。
4)外来
 外来は毎週火曜日の午前。午後に行っておりますが、新患の患者さんは常時受診可能です。西(34-3751)にお問い合わせください。外来では、ALLの維持療法の他、治療終了後の小児がんや良性腫瘍、貧血、ITP、好中球減少、免疫不全、血友病などの患児のフォローを行っております。
 好中球減少症(無顆粒球症)・βサラセミア・猫ひっかき病などは、佐賀でもしばしば経験します。疑わしい症例は是非ご紹介ください。

2.研究
研究面は、貞包雄次郎先生を中心に、石井榮一先生との共同でmicroRNAにターゲットを置いた白血病の病態解析などを進めております。
これまでに我々は、乳児白血病発症の2nd hitとしてB細胞分化制御因子Pax5 遺伝子および蛋白の異常を初めて突き止め、さらにBLNK 発現異常との相関も見出し、報告しました。(Br J Haematol, 2007)。 MLL融合遺伝子を介する多段階発癌経路の分子病態に関しては不明な点が多く、まず我々は、このmissing linkの解明に着手し、MLL遺伝子が microRNA (miRNA) の発現を制御している可能性が示唆されました。またmiRNA は、細胞の増殖・分化・アポトーシスなどに重要な役割を果たしていることが判ってきました。 そこで我々は、MLL融合遺伝子は、正常 MLL遺伝子の場合と違った microRNA の発現常を起こし、従って下流の標的遺伝子(Hox 遺伝子等)の発現パターンも変化し、癌の発生を引き起こしているのではないかと考察し、これまでに以下の解析結果を得ることができました。
MLL 再構成陽性乳児 ALL 細胞株と MLL再構成陰性細胞株で miRNA 発現をアレイで比較し、MLL再構成陽性細胞株で多くの miRNA 発現が低下していた。
・マイクロアレイ解析において発現低下を認めた miRNA のうち、HoxA9 を標的とすると予想される miRNA (let-7b, miR-125b など) とHoxA9の発現をALL 乳児の細胞で検討した (MLL融合遺伝子によるHox遺伝子の過剰発現は白血病発症の重要な要因のひとつであると考えられている)。 let-7b とHoxA9 のそれぞれの発現は、全く逆の相関関係にあり、従ってMLL 融合遺伝子→let-7bの低下→標的遺伝子(HoxA9など)の発現増加というpathwayを指示するものであった。
これまでのところ、MLL 再構成陽性乳児 ALLにおいて、microRNAの発現異常の報告は数例ありますが、このようなpathwayを証明したのは、我々が最初です。
最近let-7bは、microRNAのプロセッシングの主要な因子であるDicerを標的とし、お互いがnegative feedback loopを形成しているという重要な発見がありました (Nature, PNAS、2008)。そこで我々は、 Dicer の発現を検討したところ、予期に反してlet-7の発現と相関して低下しており、negative feedback は機能していませんでした。let-7をはじめ多くのmiRNAの発現が低下していることは、Dicer の発現が低下しmiRNAのプロセッシング機構が抑制されたことによるものであり、癌化および進展に関わる重要な病態であると推察できると考えています。
以上が、昨年の我々の研究成果であり、国内外に発表を推し進めているところです。
microRNAの研究分野においてDicerを含めたプロセッシング機構は、最も注目を集める研究課題の一つとなってきていおり、今後我々はMLL遺伝子再構成陽性乳児 ALLにおいて、
・なぜDicerの発現が抑制されたままであるのか
・下流のmiRNAの発現異常が、どのようにtumorigenesisに関与しているのか
という大きな謎に挑戦していきたいと考えています。

3.最後に 教室内で一番若いグループではありますが、佐賀医療圏の血液疾患の「なんでも屋さん」として、診断・治療にあたっております。なるべく多くのことを発信し、症例のフィードバックもしていきたいと考えておりますので、今後とも、多くのご紹介ならびにご相談をお待ちしております。若輩者ではございますが、今後とも成鳥めざしてグループを活性化させていく所存です。さらに、若い先生方の中からも、ぜひ血液グループで一緒にがんばって行こうという人が出てくることを心待ちにしております。

神経グループ
松尾宗明

 小児神経グループは、大学では松尾宗明と前田寿幸が専門外来、病棟の神経疾患の患者さんを担当しています。木曜午後の外来は、佐々木和也(好生館)も加わり3人体制で診療しています。発達障害の患者さんについては、佐賀大学文化教育学部の池田行伸先生、心理相談員の中島範子さんにWISCⅢの検査をなどで協力していただいています。今年度は、小児神経外来を受診された発達障害の患者さんの中から4人を選んで、文化教育学部での臨床教育実習の支援対象児として実習に参加していただいています。学生の勉強になるのはもちろんですが、支援の対象となった子供さんや保護者にも好評で今後も継続していく予定です。院外の専門外来は、好生館、佐賀病院を松尾宗明が担当、有田共立病院は松尾宗明と前田寿幸が担当しています。神経グループとしては、佐賀整肢学園こども発達医療センターに木附京子、石井清久、漢由華が勤務、好生館に佐々木和也、嬉野医療センターに小野晋康、田島大輔、川内恵美、唐津赤十字病院に古賀正啓、大分赤十字病院に土谷勝則がそれぞれ勤務しており、専門性を生かした診療を行っています。月に1回福岡こども病院で行われている福岡小児神経研究会には、ほとんど欠かさず出席し症例も持っていくようにしており、若手の先生方の研修の場として役立っています。研究面では、熱性けいれんについての研究を継続中で、その他、けいれん重積型急性脳症の新しい治療法の臨床治験を計画中で、もやもや病の遺伝要因についての研究、自閉症に合併するてんかんについての臨床研究も現在進行中です。

循環器グループ
田代克弥

 小児科医の不足が全国的に注目されていますが、循環器グループも数年来新メンバーの加入がありませんでした。このため、整肢学園の田崎先生を中心に大学に田代・西村・酒井、北九州の中核施設である九州厚生年金病院では渡辺・岸本、佐賀病院では漢が、県立愛媛に横田の不動のメンバーでやってきましたが、昨年漸く新メンバーに熊本夫妻が加わっていただきました。お互いのレベル向上を図るにも新たな刺激は不可欠ですので、新メンバーの加入を大変心強く感じています。また、大学では小児心電計レーダーサークが購入され更に長年の希望だった心エコー機器の更新のめどがつき、ハード面でも一つステップアップしたように思います。更に、九州厚生年金病院城尾先生のご協力をいただき、佐賀大学附属病院は小児循環器指導医資格取得のための学会指定修練施設に認定されました。
大学の外来診療は田代・西村・酒井祐子が担当し、県内の各地域の先生方から貴重な症例を御紹介いただいて勉強させていただいております。入院診療は外科手術が大学でできないこともあって制約がありますが、川崎病急性期治療を中心に新生児循環器疾患、不整脈、後天性心疾患の精査・治療を行うと共に年間15例程度の心臓カテーテル検査を行っております。
 当グループの活動の柱の一つである学校心臓健診は、佐賀県医師会と協力して佐賀中部・小城多久・武雄杵島・嬉野鹿島太良各地区の一次健診から積極的に関わっています。事業の運営も年を経るごとに円滑に進むようになり、更に昨年から中学一年は一次健診から12誘導記録へ変更してより詳細な検討を行えるようになりました。
研究も以上の活動の合間に行っていますが、川崎病に特異的な炎症マーカーの同定・血管炎における単球・脂肪細胞の役割の解明・川崎病のおけるエルシニア感染症の関与の解明をテーマに行ってきました。今年はこれらに加えて、小児成人病に関する疫学的研究も行う予定です。

 今後も地道な診療活動と共に佐賀から全国に向けて最新の研究成果を発信できるように着実な歩みを続けて生きたいと思います。そのためには熊本夫妻に続く新しいメンバーの加入を待っています。

糖尿病・内分泌・遺伝グループ
久野建夫

 今回は、最近大きく様変わりしている低身長治療について述べることにする。

1.成長ホルモン療法の適応  小児慢性特定疾患治療研究事業は平成17年に法制化され、児童福祉法に基づいて安定的に実施されるようになった。それ以前は、補助金事業として毎年厚労省が財務省に予算を要求し不安定な形で行われていたものであり、その意味では大きな進歩であったが、この法制化に際して、下垂体性低身長(成長ホルモン分泌不全性低身長)に対する公費支援が厳しく制限されることとなった。低身長の基準が平均-2.0SDから平均-2.5SDに引き下げられた点もさることながら、部分欠損や偶発的分泌の可能性を認めないという新しい条件が加わったことが大きな影響を与えている。つまり、成長ホルモン分泌の評価の全過程において、すべての測定結果が・・分泌刺激の結果でない可能性もあるがそれも含め・・6ng/ml以下であることが条件とされた。この結果、トルコ鞍周囲の器質的疾患、下垂体の遺伝的発生異常や重篤な周産期障害の後遺症などによる成長ホルモン完全欠損(低身長を主訴に受診する患者の1-2%以下だろうと思う)でない限り公費負担の対象とならず、世界で最も厳しい基準となった。

添付文書上の効能効果は部分欠損を認める厚生省班会議の診断基準に基づいており、それと「児童福祉法基準」との間に入る患者が大多数である。それらの方は健康保険の対象ではあるが、3割自己負担で治療せざるを得なくなった。成長ホルモンの薬価は1mgがほぼ1万円前後であるので、体重40kgの患者で1ヵ月(成長ホルモン30mgが必要なので)9万円の薬剤費自己負担となり、高額療養費制度のラインを越える。より体重の軽い患者でもやはり負担は高額であり、負担上限の低い組合管掌社会保険、共済保険、医療扶助、あるいは中学卒業まで外来医療費自己負担のない東京都23区などでない限り、かなり裕福な家庭でなければ治療を受けるのは困難な現状である。  20年11月にSGA(=IUGR、子宮内発育遅延)性低身長が成長ホルモンの保険適応を得たが、これは小児慢性特定疾患治療研究事業の対象になっていないため上記と同様の自己負担額の問題がある。佐賀県でも利用できる乳幼児医療対象年齢のみ投与し、そこで終了する方法も考えられるが、低年齢投与による思春期早発や終了後のcatch downの問題がある。SGA性低身長に対する成長ホルモン投与は、現実には対象が限られると思われる。

Turner症候群、achondroplasia、Prader-Willi症候群、腎不全など引き続き小児慢性特定疾患治療研究事業の対象となっていて自己負担の心配なく治療できるカテゴリーも残っているが、これらは「補充療法」というより「薬理療法」による治療ととらえるべきかと思われる。薬理療法としての成長ホルモン投与は、体重当たり投与量を補充療法より増やしても、初年度の伸び増加が少なく、また、2年目以降の伸びが目立って低下する傾向がある。achondroplasiaでは成長ホルモンの効果に満足できず、骨延長術を受ける患者も見られる。いずれにしても、成長ホルモン療法の適応は様変わりしたといってよいと思う。

2.当外来での対応  低身長を主訴に受診した患者は、(1) 低身長以外に肥満の合併、思春期完了前の成長鈍化、後葉、視床下部障害に起因する症状、神経学的異常、特異顔貌、四肢の形成異常など何らかの異常が病歴、理学所見にあるもの、(2) (1)に該当せず、最終的に添付文書上の効能効果に定める基準と「児童福祉法基準」の間に入った場合に3割自己負担(+軽減策を利用できるならそれを利用して、)に耐えて治療を希望するもの、(3) (1)にも(2)にもあてはまらないもの、の3群に分類できる。この中で(3)群が圧倒的多数を占める。

このうち(1)群に対しては頭部MRI、小奇形の評価、骨系統疾患サーベイ、尿濃縮力など必要な範囲で粛々と検査を進め、診断をつける。成長ホルモン完全欠損の多くもここに入ると思われる。(2)群には成長ホルモン分泌の評価を型通り進め、その過程で他に異常がないか検討する。  (3)群に対してどの程度まで検査を行うべきだろうか。まず、(1)群に入らないこと、特に女児ではTurner症候群でないことを確定する必要がある。児童福祉法基準をクリアできる可能性のある、すなわち身長が平均-2.5SDより低く、かつ、IGF-1、IGFBP-III低値の場合以外には、ある程度の費用負担を必要とする薬理的負荷試験は実施するメリットに乏しいと思われる。(2)群と(3)群とのどちらに所属するか、社会経済地理的差異(中間層が不利)によって決まることになった点が衝撃的である。

3.KP-102LN治験

このような低身長治療状況の激変を目前にして、代替的な手段を持っておくことの重要性は言を待たない。KP-102LN(一般名:塩酸プラルモレリン、科研製薬)はグレリン受容体アゴニストであり、現在知られている最も強力な成長ホルモン分泌刺激物質である。ヘキサペプチドで鼻粘膜から吸収されるため、この薬剤の鼻腔内投与により成長ホルモン分泌を刺激し、それによって成長率を高める作用が期待される。この薬剤は数年前に「低身長」を対象に治験が行われたが、低身長は疾患ではなく、疾患でないものへの投与は健康保険で費用負担できない、との厚労省の見解があり、今回改めて成長ホルモン分泌不全性低身長症に対するplacebo-controlled double blind studyが行われることとなり、我々もこれに参加することとした。幸い7名の患者さんの同意が得られ、治験を行っている。7名のすべてが上記の「厚生省班会議基準」と「児童福祉法基準」の間に入る方で、自己負担額の問題から成長ホルモン投与をためらっていた患者さんである。  子どもでも代諾でなく本人の自由意志を確認して参加してもらう、という点もかなり困難を伴う治験であったが、治験センターの清松看護師の優れたサポートを得て順調に進行している。体内の総成長ホルモン量は増加せず、また静注に比べ吸収率の悪いルートなので、効果が弱まる可能性もあるが、自己注射を回避でき、作用点が限定され安全性が高い点でも評価できる薬剤と考えている。

48週のdouble blind期間後は確実に実薬が投与されることになっており、現在すでに2名が治験期間を終了しておられるが、未だplacebo群か実薬群(容量が2段階ある)かはオープンされていない。1施設7名の参加者は全国で2番目に多く、ポジティブな結果が出ることを期待している。新薬の開発治験への参画は医療機関として重要な責務であると考えていることもあり、積極的に協力しているところである。

腎グループ
大塚泰史

 腎グループは現在4名です。構成は佐藤忠司(国立病院機構嬉野医療センター)、大塚泰史(佐賀大学医学部附属病院)、岡政史(有田共立病院)、酒井菜那(佐賀県立病院好生館)です。専門外来としては、大学附属病院が毎週火・木曜日9:00〜17:00,有田共立病院が第2金曜日14:00〜17:00です。嬉野医療センターが毎月第2木曜日午後に腎外来を行っております。さらに毎週月曜日午後と水曜日午前に通常の外来もあります。是非ご紹介ください。
2008年の大学病院での腎生検はrebiopsyが少なかったため10例でした。診断は巣状分節性糸球体硬化症、微小変化型ネフローゼ症候群、IgA腎症、紫斑病性腎炎、Dense Deposit Disease、常染色体劣性型Alport症候群、膜性増殖性腎炎TypeIII、メサンギウム増殖性腎炎でした。病理診断は佐賀大学病理部青木茂久先生や福岡大学病理久野敏先生にお世話になりながら診断をしています。さら血漿交換を2例(若年性関節リウマチ、巣状分節性糸球体硬化症)で経験しました。腹膜透析患者は、2例入院しました。
学会活動としては、2008年6月の第43回日本小児腎臓病学会に演題を2例提出し、落選しましたが大塚が「腎症を呈するMay-Hegglin anomalyの一家系:遺伝学的および病理学的分析」にて奨励賞候補まで選出していただきました。酒井、岡も同学会で発表してきました。その他日本腎臓学会、日韓小児腎セミナー、逆流性腎症フォーラムなどに参加してきました。
 2008年の印象として、1.西部地区の展開と2.若手の萌生を挙げます。第一に西部地区については、嬉野医療センターの腎疾患患者の多さには特筆すべきものがあります。新規ネフローゼ症候群が5例あり、遺伝性ネフローゼ症候群家族例もありました。また唐津からも膜性増殖性腎炎TypeIIIや紫斑病性腎炎の患者を紹介いただきました。小児腎臓専門医が西部地区に集まっているお蔭ですが、今後も腎疾患をみていく地盤を確保したいと考えております。
第二に若手の萌出についてですが、6年目の二人は未熟ながらも小児腎専門医として少しずつ仕事を始めています。酒井は好生館にて一人で腎疾患に向きあい、岡も腎疾患の研究について計画をたてつつあります。今後の活躍に期待したいところです。

 小児腎臓病を多く経験できる環境になりつつあります。さらに発展できるよう、基礎的な研究にも力を入れていく必要があります。少数グループですが、同門先生方のお力も借りて邁進していこうと思います。

新生児グループ
藤田一郎

 平成20年の1年間で173名の新生児患者を診療しました。院内出生が110名、院外出生が63名です。低出生体重児が少ないので病床稼働率は低いのですが、病床数6床、夜勤看護師1名の体制にしては多くの患者さんを診ていると思います。国立大学病院にNICUが必要という時代の流れに合致して、濱崎教授のご指導により平成21年4月にNICUがオープンします。人工呼吸器と保育器の購入、新生児治療室の改修工事を予定しています。夜勤看護師2名体制によって小さい重症の未熟児も診療可能となります。新生児グループの山口先生、岩永先生、江頭先生が活躍する場ができそうです。

 藤田の関心は子育て支援で、メールで健康相談・育児相談、産後うつ病スクリーニングを続けています。虐待予防は周産期からと言われるように、子育て支援が求められています。トリプルPとNobody’s Perfectという子育て支援プログラムが普及するよう保育団体や佐賀市などに働きかけています。

心身症グループ
藤田一郎

 平成17年度から心身症を診療しています。約60名の不登校と15名の思春期やせ症、そして起立性調節障害、過敏性腸症候群、チック、抜毛癖などの患者さんを診療しました。心強いのは文化教育学部の池田教授と中島先生が水曜・木曜午後に心理相談に来てくれることです。文化教育学部と医学部が共同提出した「発達障害と心身症への支援に強い教員の養成」プログラムが文部科学省のGPに通りました。特別支援教育の視察目的で池田先生の引率でカナダのマニトバ大学に行ってきました。-20℃の国に行くのは心配しましたが、お願いしたカナダ人の歓待ぶりに驚くほどでした。もちろん学校における障害者のインクルージョンの様子もしっかりと見たので参考になりました。子どもの気になる症状があれば、佐賀大学医学部の子ども総合支援センター(仮称)に行って相談しよう。というようになれば佐賀の子どもたちには役に立つはずです。この構想をめざして診療していきます。