女性小児科医

キャリアアップと「生活」の調和はできる~佐賀大学小児科医師の紹介~

医師は、医療、教育、研究など様々な方面で活躍ができる有意義な仕事です。佐賀大学では、立場の違う人々が、認めない、支えあいながら活躍できる活動を推進しております(ダイバーシティ推進)。小児科で、臨床、研究、教育に携わって活躍している先生をご紹介します。

Q自己紹介をお願いします

荒木薫です。佐賀医科大学を卒業し、初期臨床を経て佐賀大学小児科に入局しました。

小児科として臨床経験を積んだ後、佐賀大学医学部医学系研究科(大学院)に入学しました。

現在は佐賀大学ダイバーシティ推進室というところで、大学教員をしています。

Qなぜ小児科を希望したのですか

初期研修医時代に小児科をローテーションし、多くの子供を診療した際に、「この子たちがきちんと社会にでることができるよう応援することは日本の明るい未来につながる!」と直感で思ったのが最初でした(笑)。

また、自分の出産や育児の経験が、小児科では役立つのかもと考えていました。実際、自分が産休・育休を経験し、臨床を離れたときは不安になりましたが、子供が成長するにつれ、自分の育児経験が臨床に活かされることは多いと感じています。

子ども

Q大学院時代の研究について教えて下さい

当初は自分には研究は関係ないと思っていました。しかし、出産を経て、自分が今までのペースで働くことができないと気づいたときに、医師としての自分がなくなったように感じました。仕事ができない焦りや、復帰後も周りに迷惑をかけているのではないかと悩んだ時期もありました。そんなときに、ロタウイルスワクチンについて多くのお母さんが疑問を持ちながら接種していることに気が付きました。ロタウイルスワクチンの臨床的な効果や価値が、どれくらいあるのかを調べることで、患者さんだけではなく、小児科医の先生方の役にも立てるのではないかと思い、大学院への進学を決意しました。大学院での研究生活ではしっかりと指導を受けることができ、貴重な4年間を経験しました。研究生活のなかで、保育園やファミリーサポート、病児保育、宅配などあらゆるサービスをフル活用していましたが、主人が帰宅するのを待って、研究をしに大学に戻ることも多かったです。医局には臨床が忙しくて、十分な研究の時間がとれない先生方もおられるため、臨床をしていない身としては「結果を出さないといけない」と自分で奮い立たせてもいました。結果、無事に学位を取得し、卒業しましたが、共同研究者の先生方との交流はまだ続いていて、細々とですが研究も継続しています。

第29回 日本疫学会学術総会

Q現在の職務を教えてください

現在は佐賀大学ダイバーシティ推進室という部署で、学内の業務に関わっています。一見したところ小児科とは関係がないように思うのですが、「教育機関である大学で、これから社会にでる学生さんや佐賀の地域に貢献できることを考える」仕事は、私が小児科を志した理由と繋がっており、やりがいを感じています。ダイバーシティとは直訳すると「多様性」という意味です。

年齢、性別、国籍、性自認・性的指向、障がいなど、各個人の違いを認めつつ、それぞれの長所を活かせる大学づくりに取り組んでいます。小児科医としての観点、研究者としての観点、母親としての観点、それぞれが役に立っています。中学校や高校へ出張講義をすることも多く、小児科医時代に培った患者さんとの会話の仕方や学会発表などの経験が生かされています。

また、臨床の感を鈍らせたくないので非常勤での医師業も継続しています。

Q小児科を考えている若い先生方に一言

私は病院に勤務しているわけではありませんが、所属の一つに「佐賀大学小児科」を入れています。自分のホームを持つということはとても心強いことです。佐賀大学小児科の先生たちは、自分の選択を最大限応援して下さいます。

私のような医師だけではなく、アレルギー、循環器、腎臓、血液、神経、周産期等々、各分野にロールモデルとなる魅力的な先生が存在しています。佐賀大学医学部附属病院ではセミナーやカンファレンスが沢山あり、自分の知識をアップデートできる機会も多いです。

また佐賀大学では、「復帰医制度」といって育休明けの先生方の働き方をサポートする制度も整っていますし、敷地内に保育園と病児保育が併設されているので、安心して子供を預け仕事を行うことができます。

 

近年、性別や診療科を問わず、医師の働き方にも多様性が出てきていると感じています。若い先生方には専門科を選択するときは、働きやすさに主眼を置くのではなく、どんな医師になりたいのか、何を学び続けたいのかを今一度考えて選択してほしいです。

小児科は日本の未来に貢献できる素敵な科です。少しでも興味のあるあなた!仲間になりませんか?ぜひ医局に遊びに来てくださいね。

親子

佐賀大学小児科松尾教授よりメッセージ

教授 松尾 宗明

佐賀大学小児科の教室員は約半数が女性医師。そのうち7割が既婚者で子育て中の人もいますが、ほとんどが何らかの形で医療に関わってくれています。

日本の現状では、家庭や子育てにおける女性の役割が圧倒的に大きいだけに、女性医師にとって結婚後仕事を続けるのは決して簡単なことではないかもしれません。

しかし、たとえ当直やフルタイム勤務ができない状況でも、いろいろな働き方や医療への関わり方があります。大学を含めた佐賀県内のほとんどの基幹病院では時短勤務を積極的に導入していく方針ですし、外来診療のみや予防接種や健診、療育相談、母親教室などのパートタイムでの活動、研究室での活動などさまざまな選択肢があります。一人で思い悩まず、気軽に上司や周りの先輩に話してみましょう。

私もそうですが、上司の立場の人も相談されないと気付かないことがたくさんあります。話を聞かせてもらえたらきっと親身になって考えますし、あなたに合った働き方が見つかるかもしれません。佐賀の小児科には「若楠会」という女性医師の会があって、先輩女性医師から体験に基づいたいろいろなアドバイスをもらうこともできますよ。子育てや介護で大変な時期があっても、いつかまた余裕ができる時が来ます。

大切なのは、医師としてのキャリアをできるだけ切らさず医療に関わり続けること。子育てや介護の経験は、医師として、そして人間としての貴重な財産になります。

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